医療施設で更年期のケア!病院での更年期障害の治療法について

病院における更年期障害の治療法

40代も半ばを過ぎると、多くの女性は更年期障害に悩まされます。
それも年齢による自然な変化だからと、我慢している人も少なくないでしょう。

しかし、それらの症状は医療施設での適切なケアで十分にやわらげることができます。
ここでは、その方法についてくわしく紹介していきます。

更年期障害を根本から治すホルモン補充治療法

現在、更年期障害の治療法として主流となりつつあるのがホルモン補充療法です。

英語名の「Hormone Replacement Therapy」を略して「HRT」ともいわれます。

女性は更年期をむかえると、閉経によって女性ホルモンの一種であるエストロゲンが低下します。

それが原因で、のぼせやほてり、発汗、頭痛、関節痛といったさまざまな症状があらわれます。

ホルモン補充療法は、その不足分を補うことで症状をおさえたり、やわらげたりすることができます。

エストロゲンの投与が基本ですが、副作用の子宮からの出血をふせぐため、プロゲステロンの投与も同時に行います。

日本でも保険が適用され、更年期障害の治療法に用いる医療施設も少しずつ増えてきています。

ホルモン補充療法には3パターンの投与法がある

ホルモン補充療法には、ホルモンの種類や投与の仕方によって3つの方法があります。

それぞれ、特徴や条件が異なるので、医師と相談してもっとも自分に合う方法を選びましょう。

周期的併用投与法

子宮がある女性に、もっとも一般的に行われているホルモン補充療法です。

エストロゲンを毎日あるいは定期的に投与して、プロゲステロンは1ヶ月のうち半分の12〜14日間だけ連続して投与します。

プロゲステロンを投与したあとには、生理のような周期的な出血も見られます。

持続的併用投与法

エストロゲンとプロゲステロンを、毎日併用します。

投与量によって出血をコントロールできるので、出血を避けたい人に向いています。

エストロゲン単独投与法

すでに子宮を摘出した女性には、プロゲステロンを投与する必要がありません。

そのため、エストロゲンのみの投与を毎日行います。

そのほかにも、短期間の試用や、エストリオールのように作用の弱いエストロゲンを投与する場合などに、この方法が用いられます。

ホルモン補充療法の薬には2つのタイプがある

ホルモン補充療法に用いる薬は、投与の仕方によって大きく2つのタイプに分けられます。
こちらにも、それぞれにメリットやデメリットがあります。

経口剤

経口剤には、以下の3種類があります。

  • エストロゲン単剤
  • プロゲステロン単剤
  • エストロゲンとプロゲステロンの配合剤

経口剤は時間や場所を選ばず、手軽に服用できるのが大きなメリットです。

一方、胃腸から吸収されて肝臓で代謝されるさいに負担がかかるため、臓器に機能障害をもたらすリスクもあります。

経皮剤

経皮剤には、以下の3種類があります。

  • エストロゲンの貼り薬
  • エストロゲンの塗り薬
  • エストロゲンとプロゲステロン配合の貼り薬

経皮剤は、皮膚から直接成分が血液中に吸収されるので、経口剤のように胃腸や肝臓へのダメージを気にする必要はありません。

ただし、かゆみやかぶれなどの皮膚トラブルを起こすリスクもあります。

ホルモン補充療法はどのような症状に効果があるのか

ホルモン補充療法は、おもに以下のような更年期障害の症状を改善します。

  • ホットフラッシュや動悸、発汗などの血管運動神経系の症状
  • しびれ感などの知覚異常
  • 骨粗鬆症
  • 粘膜減少による萎縮性膣炎や性交痛

更年期障害以外の症状でも、以下のような健康効果を期待することができます。

  • コレステロールのバランス正常化による脂質異常症の改善
  • 不眠症の改善
  • コラーゲン増加による美肌効果

ホルモン補充療法にもリスクはある?

ホルモン補充治療法は、とても更年期障害にとても効果的な治療法です。

その一方で、どのような副作用や危険性があるのか不安に感じる人も多いでしょう。

ここでは、実際にどのようなリスクがあるのか具体的に見ていきましょう。

副作用

ホルモン補充療法を開始すると、初期に次のような副作用が見られます。

・乳房や下腹部のハリ
・吐き気
・不正性器出血
・おりもの

どのような副作用が出るかは、使用する薬剤によっても異なります。

しかし、基本的に治療に慣れてくる1〜2ヶ月後ごろには、これらの症状もほとんどおさまっています。

また、副作用は投与量やペースによってもコントロールできるので、気になる場合は医師に相談しましょう。

ホルモン補充療法はがんのリスクを高める?

ホルモン補充治療法を行うとがんになりやすい、という話を聞いたことがあるでしょうか。

その発端となったのは、1991年からアメリカで開始された「WHI(Women’s Health Initiative)」試験の研究報告です。

WHIでは、閉経後の女性の生活習慣と、がんや心血管疾患、骨粗鬆症などの病気がどのようにかかわっているかを調査してきました。

その2002年の中間報告で、ホルモン補充治療法を行うと乳がんや心血管疾患のリスクが高まる、というデータが発表されたのです。

しかし、この調査はそもそも対象者が50〜79歳と高齢であったり、健康的な生活を送っていなかったりと、いくつかの問題点がありました。

その後、国際閉経学会などがあらためてデータを解析した結果、実際にはホルモン補充治療法とがんとのあいだにはほとんどかかわりがないことが確認されました。

日本女性医学学会でも、WHIの中間報告の直後にデータの対象者は日本の更年期女性とまったく異なる、という声明を出しています。

また、2004~2005年にかけて行われた厚生労働省研究班による調査では、むしろホルモン補充治療法を経験した女性は、乳がんのリスクが半分以下になるという結果まで報告されています。

このような再評価によって、現在ではホルモン補充療法は更年期障害の標準的な治療としてあつかわれるようになっています。

特に、オーストラリアでは56%と普及率がもっとも高く、欧米全体でも30~40%とその使用が世界中に広まっています。

しかし残念ながら日本ではWHIの発表による影響がいまだに強く、1.7%と普及率はとても低いままとなっています。

もしもホルモン補充治療法に不安がある人がいれば、医師とよく相談して、正しい知識を身につけたうえで決めることをおすすめします。

ホルモン補充治療法のほかにも治療法はある?

医療施設では、ほかにも症状や体質などに合わせて、以下のような治療が行われるケースがあります。

漢方薬

ホルモン補充療法はすぐれた治療法ですが、以下のようなケースではそもそも治療を受けることができません。

  • 乳がんや子宮がん
  • 心筋梗塞や脳卒中、血栓症になったことがある
  • 重い肝臓病

ほかにも糖尿病や高血圧、肥満、喫煙者、高齢者の場合は、ホルモン補充治療法を受けることができないケースがあります。

また症状があまりに多いと、ホルモン補充治療法だけでは効果を期待できないこともあります。

このようなときに用いられるのが、漢方薬による治療です。
更年期障害では婦人科三大処方と呼ばれる3つの漢方薬が、それぞれ基本体質に合わせて用いられます。

  • 疲れやすく体が弱い「虚証」タイプ…当帰芍薬散
  • 虚証と実証の間の「中間証」タイプ…加味逍遙散
  • 体力がしっかりある「実証」タイプ…桂枝茯苓丸

ひとつだけ気をつけておきたいのは、漢方薬は病気や症状そのものをおさえる治療法ではない、ということです。

体質そのものを、ゆっくり時間をかけて改善していくものなので、その点はよく理解しておきましょう。

また漢方薬だからといって副作用がないわけでもありません。

もし体調に何らかの異常が見られた場合は、すぐに服用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。

向精神薬

更年期障害には、ほてりやのぼせ、発汗などの身体症状のほかにも、イライラや不安感、気分の落ち込み、などといった精神症状が見られます。

このような精神症状がひどい場合、あるいはホルモン補充治療法で解消されなかった場合には抗不安剤や抗うつ薬、睡眠薬などを用いるケースがあります。

なお、向精神薬は服用をはじめるさいにも、中断するさいにも、医師の診断が必要となります。
必ず相談してから行うようにしましょう。

精神療法

更年期障害の症状はエストロゲンが減少する以外にも、本人の性格や、人間関係、環境の変化が原因となってあらわれることがあります。

特に女性は更年期になると、夫の退職や子供の独立、親の介護といった人生におけるさまざまな転換期とかなさることが増えてきます。

このような場合は、心理療法やカウンセリングで、その原因となっているストレスを取りのぞくのが効果的となります。

薬物療法とも、合わせて行われることの多い治療法です。

更年期障害で病院に行くのはどのタイミングがよい?

更年期障害では、ホットフラッシュやイライラなどの代表的な症状以外にも、さまざまな症状があらわれます。

さらに、その種類や数も人によって大きく異なります。

そのため、原因が更年期障害にあると気づかなかったり、我慢すれば治ると放置してしまったりする人も少なくありません。

しかし、更年期障害は治療が遅れれば遅れるほどより治りにくくなるタイプの病気です。

以下のような症状が見られたら、まよわず病院で診てもらいましょう。

身体症状

更年期障害では、およそ半数の人に肩こりの症状が見られます。

それに続いて、頭痛、のぼせ、腰痛、発汗があらわれる人が30%前後。

さらに不眠や皮膚のかゆみ、動悸、めまいが20%前後、胃もたれ、性器の乾燥が10%前後と続きます。

これらのうち、いずれかの症状でつらいことがあれば、更年期障害をうたがうようにしましょう。

精神症状

女性ホルモンのエストロゲンには、精神状態を安定させるはたらきがあります。

そのため、更年期障害で不足すると、さまざまな精神症状があらわれます。

その割合は、疲れやすくなる人が40%ほど、不眠やイライラ、うつ症状が20%ほど。

ほかにも、不安感や恐怖感がある、感情の起伏が激しい、というときは注意が必要です。

精神症状の場合、特に対処が遅れると重症化して、精神科での治療が必要となることもあります。
気持ちの問題だと見過ごさずに、早めの受診を心がけるようにしましょう。

生理不順

更年期障害では、多くのケースで症状の前に月経周期に変化が見られます。

特に、卵巣のはたらきがおとろえるため、生理のペースが早まりやすくなります。

その逆に、ペースが遅くなったり、経血の量に変化が出たりすることもあります。

いずれにしても、生理不順が見られた場合は、その時点で病院をおとずれるようにしましょう。

普段から基礎体温や経血量などをチェックしておくと、より気づきやすくなります。

更年期障害を受診するさいの流れ

更年期障害では、以下のような流れで受診から治療までを行います。
それぞれ、くわしく見ていきましょう。

受診

更年期障害の受診は、婦人科で行うのが一般的です。

ただし、特に症状が重かったり、ストレスがあってよく話を聞いてもらいたいときなどは、更年期外来や女性外来で専門医に相談することをおすすめします。

また、更年期障害の診断を受けたら、それをきっかけにかかりつけ医を見つけておくことも大切です。
普段から診てもらう医師がいると、更年期障害の異変も見つかりやすくなります。

問診

問診では、症状にくわえて以下のような質問が行われます。

  • 生理の有無
  • 閉経からの期間
  • 子宮や卵巣、乳房などの女性特有の病歴
  • 生活習慣
  • 現在の病気
  • 家族の病気

その結果から、不調が更年期障害によるものなのかどうか、また身体症状が強いのか精神症状が強いのか、などといった大まかな判断を行います。

さらに、簡易更年期指数(SMI)の10の質問に4段階で答えることで、その重症度をはかることもできます。

検査

実際に更年期障害かどうかは、最終的に血液検査によって決定します。

エストロゲンの一種であるエストラジオールの濃度が50pg/ml以下まで低下、一方で性腺刺激ホルモンの卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の数値が上昇していることが基準となります。

さらに、ホルモン補充治療法が受けられるかどうかを調べるために、以下のような検査が行われます。

  • 身長、体重、血圧の測定
  • 超音波検査や細胞診による、子宮頚部および内膜、卵巣の検査
  • 触診やマンモグラフィー、超音波診断法による乳房の検査

ほかにも、骨量測定、心電図などによる心臓の検査、甲状腺の検査、心理テストなどが行われることもあります。

また、場合によってはそれ以外の生活習慣病や、血管年齢、婦人科の検査などもすすめられることがあります。

更年期以降になると、これらのリスクが高まるため、できるだけ受けるようにしましょう。

治療

どの投与法と薬の種類を選ぶのか、医師と相談して決めます。

その後、実際に使用する薬の用法などの説明を受けます。

ホルモン補充治療法を進めるさいには、かならず医師の指示を守り、定期的な受診で体調に気をつけながら行うようにしましょう。

症状がつらいと感じたらまよわず病院で相談しよう

更年期は、誰にでもかならずおとずれるものです。

人によって症状の種類や重さは異なりますが、なかには日常生活が送れないほどのつらさに悩まされている女性も少なくありません。

また、それを我慢することでかえってストレスをためこみ、悪化させてしまうケースもあります。

更年期障害では、特に生理不順がその重要なサインとなっています。

ほかにも、少しでもおかしいと感じることがあれば、すぐにでも病院で診断を受けるようにしましょう。